昼でもなく夜でもない、薄暮の時に小声でささやく物語。
遠い星々の声が聞こえてきそうです。
世界の果ての小さな国の何処かに、それはあります。
【子どもの国】と言う名の遊園地。
とても楽しいところだそうです。
屋外、屋内に様々なアトラクションがあり、七色のバルーン、鮮やかな花々、光が飛び散る噴水

一度行ったら子どもたちはもう夢中。
まさに子供の夢がギュッと詰まったような遊園地なのです。
その遊園地の一番奥に小さな小屋がありました。
一番奥でもありヒッソリとしているので用のある人しか、そこを訪れません。
地上部分は小さな小屋ですが、地下は違いました。
地下深く何階層にも渡る最先端のラボでした。
そこにはたくさんの子どもたちが厳重に保護されて暮らしていました。
ある子どもは円筒形の水槽の中で静かに直立不動の姿勢を保ったままじっとしています。

ある子どもはまだ生まれてもいません。
またある子どもは内蔵だけで生かされています。
腕だけ、足だけの子どももいました。
人体の一部分であっても、【その子】でした。
なぜなら肉体は容器の中で保存されるだけであっても、自我は生きていたからです。
彼らは物理的な自由はありませんでしたが、夢の中で生きていました。
楽しく友達と遊ぶ夢

成長する夢、お母さんに甘える夢、
夢の中で何不自由無い人生を送っていました。
夢を見続ける子どもたちですが
彼らはいつか、その時が来ると旅立ちます。
ラボを出る日、誰かの一部となります。

誰かの中で、また夢を見るのでしょうか?
いつか誰かの中で、覚醒するのでしょうか?
その時、その誰か、は誰と呼べば良いのでしょう?
だって、誰かさんに加えられたその心臓は、角膜は、自我を持っているのですから。
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