薄暮に語る物語

空は白々としてきたけれど、太陽はまだ地平線に上がってきていない。

そんな昼でもなく夜でもない時に語るお話

古い古い、そして大きな大聖堂の地下。

誰も知らない階段を下りて行きます。

空気はカビ臭く、灯りは手にした蝋燭だけ。

案内をしてくれるのは、蛙によく似た妖精。

降りるほどに通路は狭く傾斜も強くなっていきます。

最下層に辿り着きました、

天井から雫が落ちる音が、無限のように響いています。

狭い通路から、少し広めの部屋に入りました。

うっすらと灯りがあります。

蛙の妖精が壁際を指さします。

蝋燭を近づけてやっとわかるのは、そこに人体らしき物がある、と言う事

正体を見極めようとじっと見つめていた目が大きく開きました。

それは鎖で戒められた囚人。

壁に括りつけられています。

(惨い・・)

その人体には両肘から先、両膝から先が無かったのです。

妖精が身振り手振りで降ろしてくれと懇願しているのが分かります。

持っていた剣を使って、鎖を破壊し、人体を床に置きます。

それは初老手前の男性。

妖精は彼を上に連れて行くように言います。

干からびた人体を抱え上げ、そのまま上に上昇します。

床を通り抜け、地上に出ました。

美しい大聖堂の中です。

地下にこんな囚人がいたとは誰も知らないでしょう。

大聖堂の中のひときわ美しい椅子がありました。

王座のようなその椅子に彼を座らせせます。

するとどうでしょう?

彼は再生していきます。

失ったはずの手先足先が生えてきて、囚人は五体満足な体になりました。

しかも立派な装束に身を固め、厳かな声でこう伝えるのです。

「裁きの書を持ってきなさい」

カエルの妖精が、急いで重たい本を運んできます。

それを手にすると彼は、凛とした声で一言こう言いうのです。

「裁判を始める」

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ABOUTこの記事をかいた人

ようこそ、いらっしゃいませ。あなたが来てくれてうれしいです 振り返ってみると幼い頃の記憶は幼稚園の入園式から、それ以前はあやふやです。小学生の頃の夢は宇宙飛行士、中学生の頃は漫画家。けど誰にも言えなくて、もっと現実的な美術系の学校に行くことにしました。 でも、大学受験コケました。合格圏にいたはずの4年生大学を面接で失敗、その年は補欠の繰り上がりも無く、あえなく短大へ。人生の厳しさを知った春でした。ショックだった。でも今思うと、それは必然だったと思う。だって、その短大に行かないと出会えないと言う人が未来で待っていたから。いわゆる前世の恋人。 前世をトレースするかのように恋をして、同じように破局しました。私としては成就させたかったのだけれど・・ ここでも、ショックでフリーズした私を見逃さなかったのが実の母。 失恋の痛手で自己愛も自尊心も遥かにゼロに近くなっていた私は母の言いなりに見合いをして結婚してしました。 そこからが魂の修行の日々、過酷だったあ。 結婚して7年間は本当の自分を箱に入れて、母の言いなり、お人形のような生活に甘んじました。 7年目の早春、はっと我に返って唖然としました。 嫌いなものを黙って受け入れた人生は、大嫌いなもので満ち溢れていました。ウンザリしました。乳飲み子を含む三人の子どもがいて、介護一歩手前の祖父母がいて、しがみついて話さない母親、好みじゃない夫。 ここから私がもともといた場所までは遥かに遠い、地の果てまで飛ばされたかのようです。 ここから自分を取り戻していく泥沼を歩くような人生が始まりました。 手始めに人生で初めて母に「NO!」と言い、ついでに夫にも「これ以上子どもは生まないから。」と言いました。 弱い、と思っていた存在が逆らうと、ハチの巣を突っついたような気分になるようで、二人からの風当たりは強くなりました。 それでも後戻りする気はないし、前進あるのみ、心理学を学び、精神世界へ足を踏み入れました。そのうち直観力も自然に身につき、良きメンターに巡り合いました。 今思えば敵と思っていた存在が一番のメンターだったかもしれない。彼らがいなくて、ただの幸せな人生だったら、ここまで来なかった。 今、使命を実行できるのも彼らのおかげです。この場を借りて「ありがとう」