薄暮に囁く物語13/地底の宴

昼でもない夜でもない時間の間で語る物語

ヒタヒタと湿っぽい足音がしてオレンジ色の灯りが近づいてきて来ます。

鬼灯の提灯を持つカエルさんです。

 

カエルさんの案内で、神殿の列柱のように松の木が続く細い道を歩いていきます。

波の音が木霊のように響いて、もしかしたら両脇は海なのかもしれません。

焚火の灯りが見えてきて沢山の影がゆらゆらと動いているのがわかります。

 

カエルさんが指を立てて注意します。

「ここからは口にチャック」

「声を出すと、ここにいると知られて連れて行かれてしまうから」

 

そ~っ、と近づくことにします。

近づくほどに想像以上に強い炎の勢い。

炎に照らし出された異形のモノたちは忙しく動き回っています。

 

異形な者どもに追い立てられているのは縄でぐるぐる巻きにされた人間達。

力尽きてうずくまると細い針のようなもので次々に突き刺さして、否応にも移動を促されます。

地面から灼熱の炎が吹き出しています。

縛り上げられた人間達は燃え盛る炎の方へジワジワと追い立てられ、ついには足場を失い炎の中に落ちていくのです。

長い悲鳴が地の底から響きます。

 

その様子を見て高らかな笑い声を上げる者たち。

彼らの前にはご馳走が並び、酒を酌み交わしているようです。

 

その中にはあの夏の日に炉に火が入った、と見せてくれた青年もいました。

あの時と変わらぬ美しい所作でひときわ晴れやかに笑っています。

 

次々と落とされた人間達は、炎の中で体がどんどん焼け落ちていきます。

まさに生きながら焼かれ、とうとう顔だけが残りました。

顔と顔はねっとりとくっつき集まり始め、肉団子のようになってしまいました。

顔たちは互いを罵り合います。

「お前が悪い・・・ニ・・ト・・ひっか・・」

「・・ちが・・お前の方が・ハ・・」

 

宴はいよいよ佳境のようですが、

カエルさんに促され、来た道を戻ることにします。

何しろ声を出したら・・・

 

 

 

 

#Ascension #裁き

#日本 ####

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ようこそ、いらっしゃいませ。あなたが来てくれてうれしいです 振り返ってみると幼い頃の記憶は幼稚園の入園式から、それ以前はあやふやです。小学生の頃の夢は宇宙飛行士、中学生の頃は漫画家。けど誰にも言えなくて、もっと現実的な美術系の学校に行くことにしました。 でも、大学受験コケました。合格圏にいたはずの4年生大学を面接で失敗、その年は補欠の繰り上がりも無く、あえなく短大へ。人生の厳しさを知った春でした。ショックだった。でも今思うと、それは必然だったと思う。だって、その短大に行かないと出会えないと言う人が未来で待っていたから。いわゆる前世の恋人。 前世をトレースするかのように恋をして、同じように破局しました。私としては成就させたかったのだけれど・・ ここでも、ショックでフリーズした私を見逃さなかったのが実の母。 失恋の痛手で自己愛も自尊心も遥かにゼロに近くなっていた私は母の言いなりに見合いをして結婚してしました。 そこからが魂の修行の日々、過酷だったあ。 結婚して7年間は本当の自分を箱に入れて、母の言いなり、お人形のような生活に甘んじました。 7年目の早春、はっと我に返って唖然としました。 嫌いなものを黙って受け入れた人生は、大嫌いなもので満ち溢れていました。ウンザリしました。乳飲み子を含む三人の子どもがいて、介護一歩手前の祖父母がいて、しがみついて話さない母親、好みじゃない夫。 ここから私がもともといた場所までは遥かに遠い、地の果てまで飛ばされたかのようです。 ここから自分を取り戻していく泥沼を歩くような人生が始まりました。 手始めに人生で初めて母に「NO!」と言い、ついでに夫にも「これ以上子どもは生まないから。」と言いました。 弱い、と思っていた存在が逆らうと、ハチの巣を突っついたような気分になるようで、二人からの風当たりは強くなりました。 それでも後戻りする気はないし、前進あるのみ、心理学を学び、精神世界へ足を踏み入れました。そのうち直観力も自然に身につき、良きメンターに巡り合いました。 今思えば敵と思っていた存在が一番のメンターだったかもしれない。彼らがいなくて、ただの幸せな人生だったら、ここまで来なかった。 今、使命を実行できるのも彼らのおかげです。この場を借りて「ありがとう」