昼でもなく夜でもない時間の間に語る物語。
世界のどこかで、一匹の龍が体を小さく小さく丸めていました。
その龍を色とりどりのジェリービーンズが取り囲んでいます。
一見するとジェリービーンズの動きはコミカルで可愛いのですが
彼らは狂暴でした。
コミカルな動きはすべて龍への攻撃でした。
寄ってたかって、龍を攻撃しているのです。
ジェリービーズたちに囲まれた時、龍はもっと大きく立派で美しかった。
でも、攻撃を受けるごとに弱く小さくなってしまって、今では身を守るのが精いっぱいでした。

さもありなん。
よく目を凝らしてみるとジェリービーンズ達は手に手に槍を持ち、剣を持ち、龍を傷つけているのです。
龍は傷だらけ満身創痍でした。
龍の体は白く透き通り、鬣に浅葱色の色味が残っているだけでした。
ゼリービーンズ達は攻撃の手を休めません。
龍は逃げる事も攻撃することも諦めたようです。
ただただ、大切なものを守りぬく事だけを使命としているようでした。
それは龍にとって、どうしても捨てられない大切なものでした。
これを取られて、生き延びても意味が無い、そう思っていました。
方やゼリービーンズ達の意志は固い。
狙った獲物は逃がしません。
長い時間をかけ、少しづつ追い詰めて、もう龍が力尽きるまで、ほんの少しです。
龍はゼリービーンス達が生まれてから一度も手にしたことも無いものを持っていました。
それは自分達が欠けている事、卑しい事、まざまざと見せつけられるものでした。
だから絶対にあれが欲しい。

妬み、やっかみ、浅ましい渇望、
自分たちの身の卑しさを知るほどに、奪わずにはいられない。
龍は痛みも仕返ししたい衝動も、悔しさもみんな我慢して体をなるべく小さく固くしてお腹に抱えた大事なものを守ります。
穢されないように、奪われないように、その本質を失わないように一生懸命守ります。
これさえ守り抜けば、なんとかなる。
これさえあれば大丈夫。
龍が我が身に代えて守っていたものは
ほんのりサーモンピンクに輝く光の珠
(これが世界で一番尊いもの、これさえあれば蘇る)

龍は目に薄っすらと涙を浮かべて来ないかもしれない助けを待ち、分かれてしまった仲間を信じて、じっと耐えていました。
サーモンピンクの珠にも微かに文様が浮かんでいます。
<和の心>と読めなくもないです。
龍はジェリービーンズたちに覆いつくされそうです。
絶命・・?
時間の無い暗い空間の遠いどこかで
小さく咆哮が聞こえたような気がします・・
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