薄暮に囁く物語8/カエルの求婚

昼でも夜でもない、時の間で語られる物語。

いつものように1日を過ごすと、涼しい風が吹いて陽が暮れていきます。

お気に入りの椅子にくつろいでいると

いつものようにカエルのお使いがやってきました。

 

カエル達は心なしかワクワクしているように見えます。

神輿のような物に乗せられて地下へと降りていきます。

 

暗いトンネルを抜けるとほんのり明るい空間に出ます。

内部世界?と思しき広い空間。

 

さらに深く・・

天井の高い空間に出ます。

沢山のカエル達が集まっています。

 

中央に雛壇のような何段かの階段があり、そこを上がるように勧められます。

周囲のカエル達が、とても興奮してみているような気がします。

段に上がると豪華な椅子があり、座るように勧められます。

座ると歓声が上がりました。

何事・・?

 

部屋の奥にさらに立派な椅子があり、大きなカエルが座っています。

「大王様、この方が第一夫人に最もふさわしいと思われます。」

(えっ・・?)

「この方との婚儀を始めましょう。」

(え?・・ええ???)

 

カエルは至極真面目に話をしています。

周囲を囲むカエル達は無言の圧をかけている気さえしてきました。

(逃げたら許さない・・・)

 

と言われているような・・

満員御礼の大広間、逃げ道は完全に絶たれている。

一瞬、長刀に手をかける・・・

 

「さあ、さあ、結婚式!」

詰め寄られる、Yes以外は認めない迫力。

ボスガエルと一瞬、目が合う。

 

(大丈夫、分かっています。

あなたと私は理が違う世界に属するもの、まじわる事が無い事は承知しています。

が、家来たちは納得させる必要があります。

どうか、あなたの言葉で断ってください。)

 

ボスガエルの意思が頭の中に響いていきます。

「私の気持ちをお伝えします」

広間の中がシーンと水を打ったように静まり返りました。

 

「お気持ちが嬉しいのですが

私とあなたたちはそれぞれ違う世界に属するもの同志

共に生きる事には無理があります。

申し訳ありませんが、このお話はお断りさせてください。

 

シーンと静まり返る、大広間。

(・・殺られる?)

緊張の糸を弾く様に始まったすすり泣き。

(えっ?そこまで・・・?)

大号泣の波。

 

凛と響き渡るボスガエルの声

「鎮まれ」

「かねて用意のものをここに」

 

大きなカタツムリの殻が運ばれてきます。

ちょっとしたぬいぐるみサイズ。

「共に生きることが出来ないのは残念ですが

あなたがここまで来てくれたお礼にこれをお持ちください。」

 

童話を思い出していました。

蛙の王子様・・

見にくい蛙が実はお王道おとぎ話。

 

(イケメンだったら・・)

と思い始めていましたが、お土産をもらって帰る事にします。

真珠のような光沢のカタツムリの殻

何が入っているのか楽しみです。

 

 

 

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ABOUTこの記事をかいた人

ようこそ、いらっしゃいませ。あなたが来てくれてうれしいです 振り返ってみると幼い頃の記憶は幼稚園の入園式から、それ以前はあやふやです。小学生の頃の夢は宇宙飛行士、中学生の頃は漫画家。けど誰にも言えなくて、もっと現実的な美術系の学校に行くことにしました。 でも、大学受験コケました。合格圏にいたはずの4年生大学を面接で失敗、その年は補欠の繰り上がりも無く、あえなく短大へ。人生の厳しさを知った春でした。ショックだった。でも今思うと、それは必然だったと思う。だって、その短大に行かないと出会えないと言う人が未来で待っていたから。いわゆる前世の恋人。 前世をトレースするかのように恋をして、同じように破局しました。私としては成就させたかったのだけれど・・ ここでも、ショックでフリーズした私を見逃さなかったのが実の母。 失恋の痛手で自己愛も自尊心も遥かにゼロに近くなっていた私は母の言いなりに見合いをして結婚してしました。 そこからが魂の修行の日々、過酷だったあ。 結婚して7年間は本当の自分を箱に入れて、母の言いなり、お人形のような生活に甘んじました。 7年目の早春、はっと我に返って唖然としました。 嫌いなものを黙って受け入れた人生は、大嫌いなもので満ち溢れていました。ウンザリしました。乳飲み子を含む三人の子どもがいて、介護一歩手前の祖父母がいて、しがみついて話さない母親、好みじゃない夫。 ここから私がもともといた場所までは遥かに遠い、地の果てまで飛ばされたかのようです。 ここから自分を取り戻していく泥沼を歩くような人生が始まりました。 手始めに人生で初めて母に「NO!」と言い、ついでに夫にも「これ以上子どもは生まないから。」と言いました。 弱い、と思っていた存在が逆らうと、ハチの巣を突っついたような気分になるようで、二人からの風当たりは強くなりました。 それでも後戻りする気はないし、前進あるのみ、心理学を学び、精神世界へ足を踏み入れました。そのうち直観力も自然に身につき、良きメンターに巡り合いました。 今思えば敵と思っていた存在が一番のメンターだったかもしれない。彼らがいなくて、ただの幸せな人生だったら、ここまで来なかった。 今、使命を実行できるのも彼らのおかげです。この場を借りて「ありがとう」