これは昼でもなく、夜でもない時間の間で語られる物語
夜の世界。
永遠に明けない夜の世界には、永遠に形を変えない月が天空にかかっていました。
この世界の月はいつ見ても満月。
新月も三日月もありません。
人々はほんのりと明るい月光に照らされて平和に暮らしています。
この世界の誰一人として、月の裏側を見たことはありません。

裏側がある、ということを考えたことさえ無いでしょう。
それくらい、満月は当たり前のものになっていました。
が・・この月には秘密がありました。
と言うか、人々の認識を越えた事実がありました。
実は月の裏側は無かったのです。
正確には月はスイカを半分に割ったような半球だったのです。
裏側は、まっ平らでした。
月は秘密にしていたわけではないのです。
誰にも聞かれなかっだけなのです。
月にはこれが当たり前でしたから。

平らな円の中心に泉がありました。
滾々と湧き出る泉です。
トロッした金属質の液体。
永遠の命を与えてくれる液体です。
誰にも尋ねられないので、
誰にも気づかれないので、
そのままになっています。
月にとっては、それがいつものことですから
いつもと同じように輝いていました。
コメントを残す