空は白々としてきたけれど、太陽はまだ地平線に上がってきていない。
そんな昼でもなく夜でもない時に語るお話
古い古い、そして大きな大聖堂の地下。
誰も知らない階段を下りて行きます。
空気はカビ臭く、灯りは手にした蝋燭だけ。
案内をしてくれるのは、蛙によく似た妖精。
降りるほどに通路は狭く傾斜も強くなっていきます。
最下層に辿り着きました、
天井から雫が落ちる音が、無限のように響いています。
狭い通路から、少し広めの部屋に入りました。
うっすらと灯りがあります。
蛙の妖精が壁際を指さします。
蝋燭を近づけてやっとわかるのは、そこに人体らしき物がある、と言う事
正体を見極めようとじっと見つめていた目が大きく開きました。
それは鎖で戒められた囚人。
壁に括りつけられています。
(惨い・・)
その人体には両肘から先、両膝から先が無かったのです。
妖精が身振り手振りで降ろしてくれと懇願しているのが分かります。
持っていた剣を使って、鎖を破壊し、人体を床に置きます。
それは初老手前の男性。
妖精は彼を上に連れて行くように言います。
干からびた人体を抱え上げ、そのまま上に上昇します。
床を通り抜け、地上に出ました。
美しい大聖堂の中です。
地下にこんな囚人がいたとは誰も知らないでしょう。
大聖堂の中のひときわ美しい椅子がありました。
王座のようなその椅子に彼を座らせせます。
するとどうでしょう?
彼は再生していきます。
失ったはずの手先足先が生えてきて、囚人は五体満足な体になりました。
しかも立派な装束に身を固め、厳かな声でこう伝えるのです。
「裁きの書を持ってきなさい」
カエルの妖精が、急いで重たい本を運んできます。
それを手にすると彼は、凛とした声で一言こう言いうのです。
「裁判を始める」
コメントを残す