シンデレラにドレスを着せ、馬車の用意ができて、いざお城へと言う今この時
でも、お魔法使いのおばあさんは困った顔をしています。
どうしたの?とシンデレラが聞くとおばあさんは
「もう時間が無いんだよ、これでは行ったとしても王子様と愛を語れない、せいぜいすれ違う程度だわ。」
「魔法が最大に効果を示すタイミングを逃してしまったのよ」

「ふん!・・」
「そんな事、どうってことないわ。」
シンデレラは馬車に近づくと御者をむんずとつかみ上げ、屋根に放り投げました。
御者の姿はトカゲに変わり、空いた席にシンデレラが座ります。
「私には、私のやり方がある、こうよ・・!」

シンデレラはムチを振り上げ、驚いた馬は猛スピードで走り出しました!
「まだ言ってない事があ・・る」
馬車は豆粒よりも小さくなって、見えなくなりました。
「まあ、良いか、自分のやり方でやるなら私は必要無いだろう。」
魔法使いのおばあさんは肩を落とし、消えていきました。
一方シンデレラは蝶のように鞭を揮い馬車はあっという間にお城に着きました。
シンデレラは大汗を搔き、心臓はドキドキです。
大広間に入っていくとたくさんの人がいます。
王様と思しき人の隣に佇む美しい人!
きっとあれが王子様だわ。
シンデレラは一目で♥
広間で踊る人をかき分けて、王子様目掛けて進んでいきます。
もう少しで、手か届くという時にボーンボーンとお城の鐘が鳴り出しました。
王子様がシンデレラの手を取り、見つめ合って・・もう少しで・・鐘が鳴り終わりそうです。
「見て!彼女のドレス・・なんてことなの?」
皆の視線がシンデレラに集まります
何?視点を下げると!
シンデレラのドレスは裾から魔法が解けていきます。
歩きにくいガラスの靴を放り投げ、シンデレラは走り出しました。
「痛い!」
と、声が聞こえた気がしましたが、それどころではありません。
シンデレラはボロボロの服を着た姿に変わりました。
馬車はカボチャに戻り、御者もいません
お城からシンデレラのお家まではかなりの道のりです。
シンデレラは呆然としました。
裸足で歩いて帰らなければなりません。
「こんなひどいことってある?」
涙が出てきそうです
東の空が明るくなる頃、シンデレラは家に着きました。
へとへとでしたが、すぐに1日の仕事を始めなくてはなりません。
家の中から話し声が聞こえてきました。
「お城では王子様にガラスの靴をぶつけた犯人を捜しているそうよ」
シンデレラはギクッとしました。
継母がウキウキと語ります。
「よくやったわ、ちょうど倒れた王子様の近くにいたのが幸いだったわ」
姉の一人が王子様に見初められ、嫁ぐことが決まった、と言っています。
そんな、魔法使いのおばあさんの言う事を聞いていれば、嫁ぐの私だったかもしれないのに。
シンデレラは悔しくて悔しくて、手を握りしめました。
帰り際のお城からの使者様の姿が目に入りました。
シンデレラは気を失いそうです
昨夜舞踏会で会った王子様、その人です。
違ったんだ・・出会ってさえいなかったんだ。
そんなもんさ、
大抵人は自分のやり方にこだわって
本来の宇宙の流れを変えてしまう。
流れに乗っていればスムーズにいったのに
小さな教訓めいた声が聞こえたとさどっと払い
どっとはらい
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