あくまて寓話として、もう一つの話
昔々、気の遠くなるような原初の時に一つの魂が、銀河の逸れの小さな星への転生を決めました
あまたの星の海で揺れる小さな青い星です。
でも、その星は、流刑星として銀河中から恐れられていました。
その星は重力がとても強く、誕生すると生まれる前の記憶を全て失ってしまうのです。
知的生命体は限定的な感覚器官しか持たず、まだまだ未熟です
その魂を愛しく思う仲間は次々に引き止めました
「君が行かなくてもいいだろう?違いすぎて君の助けは理解されない。」
「あそこにいたらみんな忘れてしまうのよ、耐えられるはずがない。」
「行ってしまったら、何十万年も帰ってこれないのよ」
「時間は君たちが瞬きをするほんの一瞬だよ」
「記憶は・・あなたたちが覚えていてくれる」
「・・あなたにとっては違うわ」
「それでも行くよ、そして帰ってくる」
魂の決意は変わらないようです。
次元を超える船に乗る時も、みんなは口々に止めました。
今なら引き返せる、君のような優秀なものが行くべきじゃない
「でも、このままにしておくと宇宙全体に歪みが広がる」
「大丈夫、行くのは僕だけじゃない。きっとむこうで仲間に会えるよ」
そんなに甘くないことは君が一番知ってるだろう?
誕生のタイミングを合わせないと出会うこともできない。
それがどんなに難しいことか、わかっているだろう。
80歳と6歳で出会っても意味がないんだ。
いくつもの人生を一人孤独に生きなくてはならない。
君を理解できる知性は、地球には無い
「・・分かっている。」
「僕が孤独になっていたら星の光を送ってほしい、夜に見上げるよ。君たちを懐かしく思うだろう。」
そうはいっても直接、地球へはいけません。
清浄な時空からいきなり深い重力の底へは降りていけないのです
波動が違いすぎます。
「まずメタトロンへ行く。」
「その後でアルクトゥールスへ行って、マルベックに行く。」
「そして、火星に行くよ」
そうすればあの重い重力や暗い波動にも耐えられる力がつくだろう
時の鐘がなり、次元の通路が開かれました。
オペレーターが出発を告げます
彼に小さな紫色の四角錐が渡されました
「これはあなたと私達をつなぐ約束です。
これをあなたのハートチャクラの奥にしまいなさい。
そうすればこのミッションが終わるまであなたのもとにとどまるでしょう。」
「このミッションであなたが担うこと、地球の行く末、あなたに必要な情報のすべてがこのピラミッドに入っています。」
この魂は、それを受け取るとそっと胸にしまいました。
続けて、姿無き静かな声がこういいます
「あなたは地球でたくさんの傷を受けるだろう、再起不能なほどに傷つくかもしれない。
でも、その傷のすべてがあなたに帰り道を示す、道標となる。
恐れずミッションを遂行しなさい、魂は決して傷つきません。
一瞬と永遠のはざまのこの時空であなたを待っています。」
「私はやり遂げます。」
「それはこのミッションが偉大なことだからではない。」
「ライフメーカーから差し出されたものだからでもない。」
「自分でやると決めたから、やる。それだけです。」
「いつか、またこの時空で会いましょう。」
「別れはあなた方にとっては一瞬のまばたきをする刹那だけれど、私にとっては何十万年にもなる。」
「きっと忘れてしまう。」
「どうか、私に貴方がたを思い出させてください。」
「星を見ては貴方がたをしのびます」
カプセルの扉が閉ざされ、船は次元降下の流れに乗ります。
時空の渦の中で意識が混濁していきます。
彼はたくさんの転生を繰り返し、経験を重ねました。
そして今、生まれたばかりの少女の中にいます。
少女はまだ幼く覚醒の時はまだです。
もう少し、この幼子の中で眠ることにしよう。
いずれ覚醒の鐘が鳴り響き、嫌がおうにもミッションが始まる。
地球最後のミッションが。
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