昼でもなく、夜でもない、時の狭間で語られる物語。
ここは世界の果ての氷に閉ざされた夜の世界。
冷たい風が吹き抜け、空にはオーロラが輝く凍てついた世界です。

大きな氷の大陸が海に浮かんでいました。
大陸の下には大きな氷柱が長く伸びています。
世界の始まりから一度も解けた事のない氷です。
氷柱の中ほどには、小さな気泡が閉じ込められていました。
この小さな気泡の中には、これまた小さな龍がすっぽり入っています。
胎児のように体を丸め、両手の中にすっぽり入る珠を持っています。
何時から閉じ込められているのか、意識できないほど長く龍はじっとしていました。
龍は目覚める事があるのでしょうか?
つららの下深くには光の届かない闇が広がっています。
闇の中にポッと明かりが灯り、近づいてきます。
烏です。

両足で歩き、翼があり、手が一本あります。
その手に松明を高く掲げ、つららの真下まで歩いてきました。
周囲にポっ、ポっと次々に小さな明かりが灯りが浮かび上がります。
それらは氷柱を囲むように近づいてきます。
小さな火種は、キャンプファイアーのように大きな炎になり、熱気が上空に立ち昇っていきます。
烏はまだまだ集まってきます。
炎も大きくなる一方です。
炎の熱気はつららに届き、万年氷に雫が滲んできました。
つららは最初はゆっくりと、次第にどんどん溶け出しました。
そして、とうとう龍の眠る気泡の氷にヒビが入り・・

パン!とはじけるように気泡は崩れました。
それと同時に龍の瞼が開き、瞳がギラリと輝きます。
龍はまっすぐに落ちていく、と見えながら瞬時に上昇しました。
大勢集まった烏から大歓声が上がります。
龍は感謝を伝えるかのように上空を円を描いて飛び、その手には強い光を取り戻した珠を握りしめていました。
その珠には何か文様が描かれています。

【大和魂】と、読めなくもないです。
龍は一声大きく咆哮するとオーロラの彼方へ消えていきました。
辺りはし~んと静まり返ります。
カラス達もすでに立ち去り、ここにはまた永遠の暗闇が広がるのです。
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