薄暮に囁く物語9/氷の氷柱の中で眠る龍

昼でもなく、夜でもない、時の狭間で語られる物語。

ここは世界の果ての氷に閉ざされた夜の世界。

冷たい風が吹き抜け、空にはオーロラが輝く凍てついた世界です。

大きな氷の大陸が海に浮かんでいました。

大陸の下には大きな氷柱が長く伸びています。

 

世界の始まりから一度も解けた事のない氷です。

氷柱の中ほどには、小さな気泡が閉じ込められていました。

 

この小さな気泡の中には、これまた小さな龍がすっぽり入っています。

胎児のように体を丸め、両手の中にすっぽり入る珠を持っています。

何時から閉じ込められているのか、意識できないほど長く龍はじっとしていました。

龍は目覚める事があるのでしょうか?

 

つららの下深くには光の届かない闇が広がっています。

闇の中にポッと明かりが灯り、近づいてきます。

烏です。

両足で歩き、翼があり、手が一本あります。

その手に松明を高く掲げ、つららの真下まで歩いてきました。

 

周囲にポっ、ポっと次々に小さな明かりが灯りが浮かび上がります。

それらは氷柱を囲むように近づいてきます。

小さな火種は、キャンプファイアーのように大きな炎になり、熱気が上空に立ち昇っていきます。

烏はまだまだ集まってきます。

炎も大きくなる一方です。

 

炎の熱気はつららに届き、万年氷に雫が滲んできました。

つららは最初はゆっくりと、次第にどんどん溶け出しました。

そして、とうとう龍の眠る気泡の氷にヒビが入り・・

パン!とはじけるように気泡は崩れました。

それと同時に龍の瞼が開き、瞳がギラリと輝きます。

龍はまっすぐに落ちていく、と見えながら瞬時に上昇しました。

 

大勢集まった烏から大歓声が上がります。

龍は感謝を伝えるかのように上空を円を描いて飛び、その手には強い光を取り戻した珠を握りしめていました。

その珠には何か文様が描かれています。

【大和魂】と、読めなくもないです。

龍は一声大きく咆哮するとオーロラの彼方へ消えていきました。

 

辺りはし~んと静まり返ります。

カラス達もすでに立ち去り、ここにはまた永遠の暗闇が広がるのです。

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ようこそ、いらっしゃいませ。あなたが来てくれてうれしいです 振り返ってみると幼い頃の記憶は幼稚園の入園式から、それ以前はあやふやです。小学生の頃の夢は宇宙飛行士、中学生の頃は漫画家。けど誰にも言えなくて、もっと現実的な美術系の学校に行くことにしました。 でも、大学受験コケました。合格圏にいたはずの4年生大学を面接で失敗、その年は補欠の繰り上がりも無く、あえなく短大へ。人生の厳しさを知った春でした。ショックだった。でも今思うと、それは必然だったと思う。だって、その短大に行かないと出会えないと言う人が未来で待っていたから。いわゆる前世の恋人。 前世をトレースするかのように恋をして、同じように破局しました。私としては成就させたかったのだけれど・・ ここでも、ショックでフリーズした私を見逃さなかったのが実の母。 失恋の痛手で自己愛も自尊心も遥かにゼロに近くなっていた私は母の言いなりに見合いをして結婚してしました。 そこからが魂の修行の日々、過酷だったあ。 結婚して7年間は本当の自分を箱に入れて、母の言いなり、お人形のような生活に甘んじました。 7年目の早春、はっと我に返って唖然としました。 嫌いなものを黙って受け入れた人生は、大嫌いなもので満ち溢れていました。ウンザリしました。乳飲み子を含む三人の子どもがいて、介護一歩手前の祖父母がいて、しがみついて話さない母親、好みじゃない夫。 ここから私がもともといた場所までは遥かに遠い、地の果てまで飛ばされたかのようです。 ここから自分を取り戻していく泥沼を歩くような人生が始まりました。 手始めに人生で初めて母に「NO!」と言い、ついでに夫にも「これ以上子どもは生まないから。」と言いました。 弱い、と思っていた存在が逆らうと、ハチの巣を突っついたような気分になるようで、二人からの風当たりは強くなりました。 それでも後戻りする気はないし、前進あるのみ、心理学を学び、精神世界へ足を踏み入れました。そのうち直観力も自然に身につき、良きメンターに巡り合いました。 今思えば敵と思っていた存在が一番のメンターだったかもしれない。彼らがいなくて、ただの幸せな人生だったら、ここまで来なかった。 今、使命を実行できるのも彼らのおかげです。この場を借りて「ありがとう」